🆕『桜の森のNANA』に寄せて(座長挨拶文)🌸
2025.07.13
犬儒派リーディングアクト 第10回記念公演
『桜の森のNANA』に寄せて
咽頭がんで声を失いかけたことを機に、コント赤信号の小宮孝泰さんからの勧めで始めた朗読劇が、この四年間の間にまさか10回も続くなどとは、当初は誰一人予想もしていなかったことでしょう。もちろん私だって。
こんなヘンな朗読劇を10回も続けてこられたこと、そして、この何とも形容しがたいスタイルが、犬儒派リーディングアクトの作風として漸く認知され始めてきたのも、全ては懲りずにご来場くださったお客様方のお陰に他なりません。誠にありがとうございます。
さて、第10回記念公演です。いくらかの感慨はありますが、とくにこれと言った大きな気負いはありません。でもそうは言っても、気づかぬうちに何か見えない力が働いているのかもしれません。あるスタッフに初稿台本を見せた時、いつも以上に狂っている、と言われました。自分では狂っているものを書いた感覚が微塵もなかったので、その意外な感想に驚きましたが、その一方、よしよし今回も狂っているのか、という安堵感も得た次第です。まあ夏に桜の話をやるくらいですから、そりゃ狂ってもいるのでしょう。
今回の台本は坂口安吾の「桜の森の満開の下」がモチーフとなっています。と言っても、安吾の主義主張をそのまま伝えようなどという思いは全くなく、先達が拵えたフォーマットに敬意を払いつつ、そこに谷崎と井原西鶴を絡め、自由闊達に遊ばせていただきました。あとは私が最も信頼を置く四人の役者陣が、こちらの想像をはるかに超越したメソッドで体現化してくれることでしょう。さらに私の手の内を熟知した有能なスタッフたちが、麻姑掻痒のサポートをしてくれることでしょう。
前回の公演が終わった二週間後に、大好きだったお母さんが何処かへ旅立って行きました。その後ずっと鬱状態が続いていました。もしかしたら今もまだ鬱なのかもしれません。そんな状況下で作った作品が、お客様の目にどう映るのか、個人的にはそこが最も興味深いところです。
今までで一番面白いので、どうか観に来てください。よろしくお願いいたします。
2025.7.12.
天才ナカムラスペシャル